制作よもやま話
2003.02.20 作曲担当 宮川博之

《おばあさんの語り書き》

約6年前のお話にさかのぼります。
埼玉県鴻巣市にある特別養護老人ホーム「翔裕園」で、当時88才の女性が「うめぼしのうた」という何ともあじわいのある詩を施設の職員に紹介したのです。
記憶をたどって、おどろくほどすらすらと語り始めたそうなんです。
調べてみると明治時代に尋常小学校の教科書に載っていたことがわかりました。

「うめぼしのうた」は、七・五調で梅干しが手間ひまかけられて作られる様子、そして「苦労があっても、世の中のために努力すれば報われる」といった人生の応援メッセージがこめられています。
施設の皆さんは、「おばあさんの語り書き」として壁に掲示して日々親しんでいたそうです。

《明治時代の詩との出会い》
施設では、みんなが読み上げるうちに、「曲があったほうが親しみやすいのでは?」という声が上がるようになりました。
そこで、施設に訪れた音楽療法士の本間優子さんを通じて、この明治時代の詩「うめぼしのうた」に出会うことになったのです。

私はこの詩を見たとき、施設のお年寄りが書いたものと思い込んでしまって「七・五調のしっかりした詩だなあ」と言いながら童謡調?音頭調?とイメージの要望を聞きました。
ところが、施設の職員からは何とJ-ポップのような軽快な感じが良いとの意見が上がったらしいとのこと。
そこで「はっ!」と思うことがあったのです。

《概念捨てて新たな試み》
高齢者のレクリエーションや音楽療法では、唱歌・童謡・歌謡曲といった「なじみの歌」を使うことが多いものです。
でも、セラピストや施設職員は若い年代も多く、高齢者の趣向に一生懸命合わせてセッションやレクレーションを行う姿を目にします。
基本的にそれはとても良いことなのですが、最近は高齢者をケアする側のストレスや心のケアも気になっていました。

もともと高齢者になじみのある詩に、若いスタッフでも自然と楽しめる曲が出来たら・・・。
双方が楽しめて梅干の話題や昔話に花が咲けばと思い
私は、施設のレクリエーションや音楽療法でも使えるような楽曲を目標に作業を開始したのでした。

《時空を越えた創作活動》
数え歌のような詩のフレーズを大まかにわけて、「Aメロ・Bメロ・サビ」としてポップス風の雰囲気作りとベースになる8ビートのリズムパターン。
メロディーは意外と自然に浮かび、まるで昔から知っていたような感覚で出来てしまいました。
録音作業は予算もないし、自宅にハードディスクレコーダーを持ち込んで納得のいくまでアレンジを続けたのです。

《創作というより研究開発?
サンプルテープが出来たので、今回協力をいただいた社会福祉法人の関連施設と民間のデイサービスセンターの高齢者約300名を対象に音楽療法セッション中に鑑賞してもらい、
その後、各施設に関わっているスタッフの皆さんと再度「うめぼしのうた」の活用について検討しました。
速かったテンポを遅くすることと、高齢者に少しでも体を動かしてもらえるようにと、デイサービスセンターの鈴木マリ子さんにお願いして踊りの要素を取り入れた「元気体操」が出来上がることになりました。

更に、この歌に登場する梅干は、あたかも人格があるような表現がされていたので、イメージキャラクターを作ることにしたのです。

《広がれ元気の輪!》
たくさんの方の協力と要望により、CDを作ろうとの話が持ち上がり「うめぼしのうた」と「元気体操」が完成して、現在全国に向けて元気の輪が広がりつつあります。
メディアにも取り上げられ、「母や祖母がつぶやいていた」「デイサービスで使いたい」等の意見をたくさんいただきました。
また、最近は食べ物ソングも流行っているようで、保育園や小学校でも利用されているようです。
いずれにしても作曲者としては、流行歌的な作品ではなく、明治時代から語り継がれた「うめぼしのうた」が今度は福祉施設や学校で歌い・踊り継がれてくれればと願ってやみません。

最後に「うめぼしのうた」制作にご協力いただいた皆様と総括的なご意見とご協力をいただいた、社会福祉法人元気村の神成理事長様には厚く御礼申し上げます。





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